
このところ、友達の様子が変だ。急に髪を黒く染めたり、日経新聞を読んだりするようになった。
何かある‥そう踏んだたかしくんは、クラスメイトの1人に1万円を握らせ事情を聞き出した。
「みんな就職活動を始めたんだと思うよ」もうそういう時期なのか‥僕も始めなければ!!でも、一体何から始めれば?熟慮した結果、たかしくんはまず自分がどんな職業に向いているのか占い師に占ってもらうことにした。たかしくんは髪を黒く染めスーツを着用して、電車に飛び乗った。でもよく考えたら、占いに行くのにスーツを着る必要は全く無かった。
そんなことを考えて上の空で歩いていたので、たかしくんは電車とホームの間が広く開いていることに気付いていなかった。落ちる!たかしくんは受け身の体勢をとった。しかし次の瞬間、たかしくんはホームの上にいた。1人の紳士がたかしくんの手を取ってホームに引き上げてくれたのだ。「ありがとうございます!」たかしくんはお礼に1万円を手渡そうとしたが、紳士はそれを丁重に断った。「せめて名前だけでも!」紳士は、クロス・ヘッドと書かれた名刺をたかしくんに手渡した。それが、たかしくんとクロス・ヘッドの出会いであった。

占い師はたかしくんを見るなり、言い放った。「就職活動中だね?」たかしくんは驚いた。
さすが赤坂の父! 「教えて下さい!僕はどんな職業に向いているんでしょうか?」
「答えは、この水晶玉が知っている」赤坂の父は水晶玉を覗き込んだ。
それから、長い沈黙が続いた。
この時、赤坂の父は焦っていた。
水晶玉を覗いても、何も見えてこないのだ。
これまで様々な相談を受けてきた。その度に水晶玉は、答えを映し出してくれた。
こんなことは初めてだった。
何でもいい。何か言わなければ!
「ズバリ、IT業界です」適当に答えたのに、「ズバリ」とか言ってしまった。赤坂の父は自己嫌悪に陥ったが、たかしくんは満足そうに帰っていった。
帰宅後、たかしくんは手下を呼び出し、名刺の男性を探すように指示した。
どうしても謝礼を手渡したかったのだ。結局男性は見付からなかったのだが、手下の報告から次のような事実が分かった。
クロス・ヘッドのビルの1階にはスタバがあること。社内はスタイリッシュな内装で、トイレにはウォシュレットもあること。そして、クロス・ヘッドがIT企業であること‥
なんという偶然!!俄然クロス・ヘッドに興味をそそられるたかしくんであった。

手下は、もう一つ、重要な情報を持って帰っていた。
クロス・ヘッドが08年度から新卒採用を始めるというのである。たかしくんはさっそく「クロス・ヘッド絶対内定!」という貼り紙を部屋に貼った。
しかし、たかしくんがIT業界について知っていることといえば、社長が女優と結婚したりするということくらいだった。クロス・ヘッドの社長も女優と結婚しているのだろうか?それは面接で直接聞いてみるとして、IT業界の全体像くらい把握しておかねば内定は覚束ない。たかしくんは、かねてIT業界志望を公言していたクラスメイトを呼び出した。「IT業界について教えてくれないかな?」「断る」最初は渋っていたクラスメイトだが、1万円を渡すと、快く教えてくれた。
それによると、IT業界とは「情報データをやり取りするシステム」にまつわる様々なビジネスを総称する言葉で、広義で捉えればインターネットを扱う電話や通信会社も含まれるが、一般的にはソフトウェアと情報処理の2分野に分けられ、さらにその分野が細分化されるという。「その中では、どれがオススメ?」「ズバリ、ネットワークソリューションだね」
ネットワークソリューション。たかしくんはどこで区切って読めばいいのかも分からなかった。













